高血圧症

2025年に高血圧ガイドラインが改定されました

わが国の高血圧者数は約4300万人と推定されていますが、うち3100万人が管理不良とされています。血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、高血圧症は、正常範囲よりも高い血圧が続く病態をいいます。血管の内壁は本来弾力性がありますが、血圧が高い状態が続くと血管は次第に厚く、硬くなり動脈硬化を起こします。また、血管に弾力性があるときは、血圧は基準値以下に収まりますが、動脈硬化などで末梢血流が悪くなるとそれを補うために心臓がより強い力で全身に血液を送ることで血圧が上がります。こうした悪循環が常態化してしまうのが高血圧症です。
高血圧には、内分泌疾患や睡眠時無呼吸症候群、薬剤などで起こる二次性高血圧と、はっきりした原因のない本態性高血圧がありますが、日本人の高血圧症の約90％が本態性高血圧といわれています。本態性高血圧は、遺伝的要因と塩分の摂り過ぎ、肥満、過度な飲酒、喫煙、運動不足、精神的なストレスなどの環境的要因が重なって発症すると考えられています。高血圧症は自覚症状に乏しく、なかなか気づくことができませんが、そのままにしておくと、動脈硬化を生じて心不全や狭心症、心筋梗塞といった心臓血管系の病気をまねいたり、脳出血・脳梗塞の原因になったりします。症状がなくても放置しておくことは禁物です。まずは、定期的かつ決まった時間に血圧を測定してご自身の血圧を管理しましょう。

高血圧ガイドライン2025の前回からの変更点が公開されました。

高血圧の判定に変更なし：引き続き家庭血圧の重要性が強調
診察室血圧の基準：140／90 mmHg以上
家庭血圧の基準：135／85 mmHg以上
目標血圧の一本化：診察室血圧：130／80 mmHg未満
家庭血圧：125／75 mmHg未満

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態をいいます。「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロール（LDL-C）や中性脂肪（トリグリセライド）が必要以上に増えたり、あるいは「善玉コレステロール」であるHDLコレステロール（HDL-C）が減ったりする病態です。これらの脂質異常はいずれも、動脈硬化の促進と関連します。血液中にLDL-Cが増えると、動脈内壁に取り込まれて蓄積しプラークを形成します。これが酸化・炎症を起こすなどして、血管が硬くなります。これが動脈硬化です。トリグリセライドも過剰になると、血管の健康が損なわれます。一方、HDL-Cは、色々な臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収し肝臓に戻す働きがあり、動脈硬化を抑える方向に作用します。つまり、動脈硬化の予防や改善にはLDL-Cと中性脂肪を減らし、「善玉」のHDL-Cを増やすことが重要になります。
脂質異常症は、それだけではとくに症状が現れることはありませんが、気がつかないうちに血管が傷つけられ、静かに動脈硬化が進行し、心臓や脳血管の疾患につながるおそれがあります。脂質異常症の主な原因は、食生活（肥満・カロリー過多）や過度な飲酒、喫煙、運動不足などが考えられます。

脂質異常症では、毎日口にする食品の選び方が重要です。これからご紹介する、植物性油についてもLDL-Cは低下しますが、油としてのカロリーがあるので、糖尿病、肥満の方では摂取量に注意が必要です。
まず、適正な総摂取カロリーを体格、活動量、体調から算出します。そのうえで管理栄養士が中心となって、炭水化物（穀物、糖質）、脂質（コレステロール、脂肪酸）摂取量と、さらに脂肪酸（飽和脂肪酸と、不飽和脂肪酸；n-3系(ω3：オメガ3)、n-6系(ω6)、一価(ω9)）の割合を考えていきます。コレステロール・飽和脂肪酸・トランス脂肪酸はLDL-Cを上昇させ、炭水化物・アルコールを多くとるとトリグリセライドが上昇します。

高尿酸血症とは血液中の尿酸が7mg/dlを超える状態（尿酸が血中に溶けることができる限界の濃度が7mg/dl）をいいます。痛風や腎結石、尿路結石の原因になるほか、肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病を複合的に合併することが多いです。高尿酸血症の状態が続くと、尿酸の結晶（尿酸塩結晶）が関節（足、特に足の親指の付け根の部分）にたまり、これを好中球が貪食することで炎症を起こすと、痛風発作を発症します。痛風発作はあまりの痛みで、足を引きずって歩くほどです。

痛風発作は痛いだけではない

痛風発作後に急性心筋梗塞や脳卒中が発生しやすいという報告があります。これは、発作中には冠動脈の内膜測に尿酸塩結晶が沈着し、冠動脈で炎症を引き起こすことが原因と考えられています。

一方で、尿酸は血管内皮機能の維持（抗酸化物質として働く）に重要

血清尿酸値と慢性腎臓病・冠動脈疾患のリスク関係にはいわゆるJカーブ現象が報告されており、高度の低尿酸血症（3～4mg/dl未満）はむしろ慢性腎臓病・冠動脈疾患のリスクを高めるとされ、過度な治療は控える必要があるといわれています

食事療法で健康的な食生活を目指す

痛風発作は消炎鎮痛剤などの治療で、 1～2 週間ほどで落ち着きますが、治療を中断してそのまま放置すると、痛風結節（コブのようなもの）ができたり、腎機能障害や尿路結石のリスクを高めたりします。血清尿酸値を4～6mg/dlに保つことが治療目標となります。痛風発作が起こった時には、すでに関節に尿酸結晶が析出している状況です。発作を一度起こすと、その後も発作を繰り返すことが多いため、発作改善後にしっかりと尿酸値を安定して下げる必要があります。まずは原因となる、肥満、水をあまり飲まない習慣、ソフトドリンク多飲、果物のとりすぎ、暴飲暴食、野菜不足を見直す必要があります。このほかにも、不適切な生活習慣がないかを管理栄養士と確認することが大切です。
また、当院では当日に尿酸値測定や、発作時には炎症反応の確認を実施していますので、足の痛みがあり痛風発作が心配な際には、お気軽にご相談ください。