2026年7月24日
高齢者糖尿病の合併症予防について
2024年「糖尿病診療ガイドライン」が改定されました。その中で、高齢者糖尿病患者さんの合併症管理について示されました。
今回は、高齢糖尿病の特徴と合併症の予防についてご説明いたします。
高齢者糖尿病の特徴
食後高血糖や重症低血糖を起こしやすい
65歳以上の糖尿病を高齢者糖尿病といいます。
加齢にともない、インスリン分泌低下、体組成の変化(筋肉量の低下・内臓脂肪の増加)、身体活動量の低下などによるインスリン抵抗性増大(インスリンの効きが悪くなる)などがあり、食後の高血糖をきたしやすくなります。
一方、高齢者の低血糖では、自律神経症状である発汗、動悸、手の震えなどの症状が出現せず、非典型的な症状で起こることも少なくないため、低血糖が見逃されやすく、重症の低血糖を起こしやすく、その頻度は、加齢とともに増加します。
薬での有害事象が起こりやすい
加齢とともに腎臓の機能が低下し、何種類ものお薬を併用することで、有害事象が起こりやすくなります。
動脈硬化が原因となる合併症が多い
高齢糖尿病では、動脈硬化が原因となる合併症(脳梗塞、虚血性心疾患、下肢末梢動脈疾患)の合併が多くなります。また、症状の全く出ない脳梗塞や虚血性心疾患が多く、脳や心臓などど重大なトラブルを起こしやすくなります。
認知機能低下、フレイル、サルコペニア、ADL低下、転倒、うつ状態など老年症候群をきたしやすい
高齢糖尿病において、高血糖は糖尿病網膜症、糖尿病腎症、心血管疾患、脳卒中、心不全の危険因子です。また、高齢糖尿病は認知機能の低下や、うつ、ADL(日常生活動作)の低下、サルコペニア(筋力の低下)、転倒、骨折、フレイル、低栄養、などの老年症候群を2倍きたしやすく、なかでも75歳~80歳以上の高齢糖尿病でADL低下、認知機能障害・認知症、腎機能の低下、重症低血糖、脳卒中、心不全は起こりやすくなります。
したがって、75歳以上の高齢者と機能低下がある一部の65~74歳の高齢者が「高齢者糖尿病」として特に注意して治療、合併症の予防・管理を行うことが必要です。
血圧と脂質異常症の管理で合併症を予防
糖尿病の合併症は、し・め・じの細小血管症と動脈硬化の大血管症

細小血管症と大血管症
合併症は細い血管に起こる細小血管症と太くて大きい血管に起こる大血管症とに分けられます。
細小血管症は、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の3つで、それぞれの部位から一文字取って「し(神経)・め(目)・じ(腎臓)」で覚えられます。
大血管症は、動脈硬化が原因で起こる疾患で、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などです。
高血圧や脂質異常症が、糖尿病の合併症の重要な危険因子になります。
高齢者糖尿病の高血圧コントロールは細小血管症の発症・進行抑制に有効
高血圧は、腎症、特に微量アルブミン尿の増加に関与しています。
高齢者においても血圧を下げるお薬のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による腎症の進行抑制効果が示されました。
※上記お薬を服用する上での注意点は、脱水(熱中症)時には逆に腎臓の働きを落とすので、これらのお薬を服用している方はこまめな水分補給が特に重要です。
高齢者糖尿病の高血圧コントロールと脂質異常症管理は大血管症の発症・進行抑制に有効
<高血圧・脂質異常症は大血管症の危険因子です>
血圧やコレステロールの数値が一定以上になると大血管症のリスクが上がり、逆に一定数値にコントロールできれば大血管症のリスクを下げると示されました。
大血管症リスク上げる
➡収縮期血圧 147mmHg以上 や LDLコレステロール 136mg/dL以上
大血管症のリスク下げる
➡収縮期血圧 127~136mmHg および LDLコレステロール99~116mg/dL
高齢者糖尿病においても脂質異常症のお薬のスタチン(肝臓でのコレステロール合成を抑える)による、脳・心血管イベントの抑制が示されています。
また高LDLコレステロール血症(LDLコレステロール140mg/dL以上)を有する糖尿病患者を含む75歳以上の方のエゼチミブ(コレステロールの吸収をブロックする薬)による治療は心血管複合イベントを抑制しました。
高齢者糖尿病を対象とした日本の研究でも 130/80mmHg前後まで血圧を下げてコントロールすることで心血管イベントや脳卒中の抑制効果が示されています。
食事や運動によって生活習慣を整え、適切な薬物療法により血糖値と併せて血圧・脂質をコントロールすることは、合併症を抑制する上で大切です。
異常のことから血圧とLDLコレステロールそれぞれの管理目標値は、
●血圧管理目標: 130/80mmHg未満
●LDLコレステロール目標値: 120㎎/dL未満
※ただし、高齢者糖尿病では、個人差が大きく、合併症や併存疾患だけでなく、身体機能、認知機能、社会・経済状況などを総合的に判断し、目標値を設定します。
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